プラトン基本情報
紀元前427年~前347年。ソクラテスの弟子。哲学者。
プラトンは政治家一族の末裔に生まれ、幼い頃から政治に関心を持っていました。
その一方で、ソクラテスの門下に入り哲学を嗜んでいました。
そんな中、ソクラテスが不条理な理由によって死んでしまいます。
プラトンはソクラテスが死んだことに強い衝撃を受け、アテネの堕落した社会を嘆きました。
そして、同じ悲劇を二度と繰り返してはならないとして、自らが哲学者になることでより良い世の中を作ろうとしたのです。

イデア
プラトンの思想は非常に難解なことで知られています。
まずは、プラトンの代表的な思想であるイデア論について紹介していきます。
イデアとは、次のように定義されています。
デジタル大辞泉
色々難しい言葉が並んでいますが、大切なのは、
イデアが「すべてのもののあるべき姿」を突き詰めた究極的な理想像である、ということ。
辺りを見回しみててください。
えんぴつ、ノート、机......そして私たちにも、それぞれのイデアがあるのです。
しかし、私たちはイデアがどのようなものなのか分かりません。
イデアは現実の世界には存在しないからです。
イデアは、イデア界と呼ばれるまた別の世界に存在するのです。
なぜイデアは現実の世界には存在しないのか。
それは、現実の世界では「完全なもの」が実現できないからです。
例えば、下のような正三角形があるとします。

正三角形の特徴として、3辺の長さが等しいことや、一つの内角が60度であることがあります。
しかし、この正三角形はこれらの特徴を完全に満たしているとは言えません。
下のように拡大してみてみると、辺がでこぼこしているのが分かります。

直線によって囲まれていないので、これは完全な角とは言えません。
また、そもそも辺が直線ではないので三角形とは言えません。
このように、現実の世界では完全なものを作ることができないため、イデアは実現されません。
しかし、イデア界にある正三角形のイデアには、これらの性質を兼ね備えた完全な正三角形が実現されているのです。
そして、すべてのイデアの頂点に立つ、最も優れたイデアは善のイデアだとされています。
善のイデアはすべてのイデアに「善きもの」という性質を与え、イデアの最高位となっています。
そのため「イデアのイデア」とも呼ばれています。
※イデアは、英語のidea(考え)やideal(理想的な)の語源になっています。
アナムネーシス(想起)とエロース
プラトンによれば、私たちの魂はかつてイデア界に住んでおり、そこで数々のイデアを見てきました。
だから現実の世界で不完全なものを見ても、私たちはイデア界で見たイデアを思い出すことで(想起・アナムネーシス)、それを認識することができるのです。
例えば犬にはトイプードルやチワワなど色んな種類がありますが、私たちはそれらすべてを犬だと認識できますよね。
それも私たちがイデア界で見た犬のイデアを思い出してるからなのです。
また、私たちはつねにイデア界に対する強い憧れ(エロース)を持っています。
エロースは、元々「美しいものや善いものを追い求めようとする情熱」という意味です。
プラトンによれば、人間はイデア界のイデアたちに魅力を感じて、「またイデア界に戻りたい」と思っているそうです。
洞窟の比喩
プラトンは、洞窟の比喩と呼ばれる技法を用いました。
下のように、私たちは生まれた時から洞窟の壁と向き合いながら過ごしています。
背後にある入り口の光を見ることはありません。
そのため、洞窟の壁に映る影絵こそが真実であると思い込んでいます。
後ろの実像に気づくことすらできません。
プラトンは、この影絵を現実の事象、背後の実像をイデアにたとえています。
つまり、私たちは現実の世界がすべてであると思い込んでおり、イデア界を見ていないことを指摘したのです。
そしてプラトンは、背後を振り返りイデア界に触れることで、物事の本質を探るべきだと説きました。

魂の三分説
プラトンは、人間の魂を理性・気概・欲望の三つに分けました。(魂の三分説)
理性は論理的に物事を判断し、気概は自らを高めようとし、欲望は生理的欲求に従います。
そのため理性が命令を下し、気概がこれを助け、欲望がそれに従うことで魂はバランスの取れた正しい状態になるといいました。
魂の三分説は、よく二頭の馬にたとえられます。
二頭の馬とは「気概」と「欲望」で、「気概」の馬は自分を高めるために上へ行こうとします。
しかし、「欲望」の馬は食欲や物欲に流されてどんどん下へ行ってしまいます。
それをうまくコントロールするのが、二頭の馬を指揮する「理性」なのです。

四元徳
また、プラトンは魂の三分説に対応させ、四元徳を説きました。
四元徳は、魂の三分説のそれぞれを進化させたような形になります。
つまり、理性が成長すると知恵、気概が発展すると勇気、欲望をおさえると節制になります。
理性をもちいて論理的に行動すると、知恵を得ることができます。同じように、強い気概を働かせると勇気が生まれ、欲望をうまくコントロールすると節制に行きつきます。
この三つがそろうと、正義の徳が実現されるのです。
知恵・勇気・節制・正義の徳を四元徳と呼びます。
国家論
さらにプラトンは人間の魂と同じように、国家を理性・気概・欲望の三つに分けて理想の国家像を描きました。
プラトンによると、知恵をそなえた統治者が国家を治め、防衛者が勇気を持って国家を守り、生産者(農夫や職人など)が節制を持って働くことで国家全体の正義が実現されます。
魂の三分説、四元徳、国家論をまとめると以下のようになります。

哲人政治
またプラトンは、無知な統治者によって社会が腐敗するのを避けるため、統治者は哲学を学ぶべきだとしました。(哲人政治)
知恵ある者が国を治めることで、よりよい社会が築かれるのです。
そんな統治者を育てるため、プラトンはアカデメイアという学校を作りました。
そこでは、史上類を見ない優秀な成績を治めた若者が現れました。
彼はアカデメイアで学んだのち、プラトンに次ぐ著名な哲学者として活躍することになります。
次の記事ではそんな哲学者、アリストテレスを紹介します。