背景
ギリシアからイラクにまたがる地域では、長い間多くのポリスが興亡していました。
しかし、そんな地域を一つの国にまとめた者が現れました。
彼の名を、アレクサンドロスといいます。

乱立していたポリスが一つになることで、人びとは新たな文化に触れるようになります。
こうして一度に大量の文化が流入したことで形成された新たな価値観をヘレニズム思想といいます。
エピクロス派
ヘレニズム思想のひとつであるエピクロス派は、快楽主義が基本となっています。
しかし、この快楽主義はただ贅沢をして生きるという意味ではありません。
ストレスの多い現代社会から離れ、気の許せる家族や友人とともにストレスフリーの生活を送ろう、という意味です。
そんなエピクロス派の教祖エピクロスは、心が常に落ち着いている状態、アタラクシアを理想としました。
また、エピクロス派ではそんな悠々自適な暮らし方をすすめるために、「隠れて生きよ」という言葉があります。
これも「心を乱す世界から離れ、落ち着いて暮らそう」という意味です。
つまり、「(喧噪な世の中から)隠れて生きよ」ということなのです。
ストア派
もうひとつのストア派は、禁欲主義が根底にあります。
エピクロス派とは真反対です。
ストア派はストイックの語源です。
つまり「ストイックに生きなさい」というのがストア派の教えになっています。
ストア派の教祖ゼノンは、「この世界は理性が支配している」と考えました。
そのため私たちがストイックな生活をすることで欲や情に打ち勝ち、理性と一体になって生きるべきだとしました。
この理性と一体になっている状態はアパテイア(不動心)と呼ばれ、ストア派では理想の状態とされています。
また、理性が支配しているこの世界では、人間の理性の一部となっています。
この理性に身をゆだねて生きることで、私たちは自然の摂理に従って生きることになるのです。
ストア派では、このことを「自然に従って生きよ」といいました。
このように、新たな文化が融合することで、相対する二つの哲学が生まれたのでした。
次の記事では、舞台をヨーロッパへと移して、旧約聖書の世界を描いていきます。